カラーマネジメントモニターといえば、EIZOとBenQの2社が有名だ。国内メーカーであるEIZOのモニターは品質が高く、昔から定評がある。デザイナーや写真家、印刷業などで愛用している人も多い。BenQは比較的、新しいメーカでカラーマネジメントモニターで、認知されるようになってきたのも、近年のことだ。
今回はこの2社のカラーマネジメントモニター EIZO CS2420とBenQ SW240の実機を並べて、性能等の比較を行っていく。どちらも使用時間は数百時間ほど。
両社のラインナップのなかで、最も安いAdobe RGB色域のモニター
今回比較する、EIZO CS2420とBenQ SW240は、それぞれのメーカーの製品のなかで最も価格の安い、Adobe RGB色域のカラーマネジメントモニターだ。
CS2420は型番が「CS2420-BK」 「CS2420-Z」「CS2420-ZBK」 のものがあるが、付属品のみが異なるだけで、モニター本体は全く同じものだ。
BenQ SW240 | EIZO CS2420 | |
価格 | ¥ 46,000 | ¥88,000 |
画面サイズ (縦横比) | 24.1型 (16:10) | 24.1型 (16:10) |
解像度 | 1920×1200 | 1920×1200 |
パネル | IPS (アンチグレア) | IPS (アンチグレア) |
色域 | AdobeRGB 99% | AdobeRGB 99% |
ユニフォミティ補正回路 | なし | あり |
キャリブレーション | ハードウェアキャリブレーション対応 | ハードウェアキャリブレーション対応 |
質量 | 6.7kg | 7.8㎏ |
保証 | 3年 | 5年 (無輝点保証6か月) |
基本的にスペックはほとんど同じだ。違うのは、画面の色ムラを補正するユニフォミティ補正回路がSW240にはないことと、保証期間の長さくらいだ。だた価格差が4万以上もあるため、この点は仕方ないかもしれない。
SW240の上位モデルにあたる、SW270C (8.9万円)には、ユニフォミティ補正回路がある。
外観
とりあえず、外観を見ていこう。
モニターを最大の高さまで上げた状態。
モニターを一番下まで下げた状態。
両製品ともに、正面から見て右回りに90°回転する。
背面。大きな違いはないがBenQ SW240は台座側に持ち手がついている。EIZO CS2420はモニター側に持ちてと言って良いのかは分からないが、ロゴの下にくぼみがある。
BenQ SW240はアームとモニターの取り付け部分が可動するのに対して、EIZO CS2420はアームが可動するため、可動域が広い。
若干だが、下方向にも傾けることができる。
画面入力も同じだ。画面入力端子横のUSB3.0 B端子のポート(青いやつ)はPCと接続して通信を行うためのもの。キャリブレーションの際はPCと接続する必要がある。また、モニター側面にポートがあり、それをUSBハブのように利用できる。
次は側面のポートを見てみよう。BenQ SW240はUSB3.0ポートが2つとSDカードスロット。EIZO CS 2420はUSB 3.0ポートが3つ、一番上のポートはモニターの設定で充電専用かデータ通信用か切り替えができる。
モニタの操作ボタンは、BenQ SW240は物理ボタン。EIZO CS2420は静電式、押した感覚がないので替わりに電子音が鳴る。設定で切ることもできる。
実際にキャリブレーションをしてみる
実際に2つのモニターを並べてキャリブレーションを行う。ハードウェアキャリブレーションには、それぞれのメーカーの専用ソフトを使用する。EIZOはColorNavigator 7、BenQはPalette Master Element。
目標値はsRGBの規格値に設定した。使用したセンサーはX-riteのi1Display Pro
BenQ SW240はパッチセットサイズは中に設定している。
キャリブレーションにかかる時間自体は長くとも10~15分程度であるから、そこまで重要ではない。(モニターとしての性能を左右するものではない)
EIZO CS2420は2分50秒でキャリブレーションが完了したが、BenQ SW240は9分10秒かかった。
BenQ SW240はキャリブレーションの際に、数十~百数十の決まった数の色を測定して、キャリブレーションを行っている。一方、EIZO CS2420はモニターの色特性を把握してから、必要な色のみ表示してキャリブレーションをおこなっているようだ。これがキャリブレーションにかかる時間に差を生んでいるようだ。
キャリブレーションした画面を比較
キャリブレーションしたモニターに黒(R:0 G:0 B:0)、白(R:255 G:255 B:255)、グレー(R:119 G:119 B:119)の単色を表示して並べて、比較してみる。
黒と白だと、ほとんど差は見られないがグレーを表示すると、BenQ SW240は色ムラが少し出ているのが分かる。対してEIZO CS2420は色ムラがほとんどないのが分かる。
まわりの照明を落としてみると、さらによく分かる。画面の色ムラを補正する、デジタルユニフォミティ補正回路の有無による差が出ている。
カメラで撮影しているので正確に細かい部分までは比較できないが、 EIZOのサンプル画像を表示したもの。当たり前だが同じ目標値でキャリブレーションしているので、ほとんど同じだ。少し人物の肌の色合いは違っている。
モニターの色域を見てみる
どちらのモニターもスペック上は「Adobe RGB 99%」カバーとなっているが、実際の色域を見てみる。目標値は実際のプリントを意識して、白色点 5000K・120cd/m2・Adobe RGBに設定して、キャリブレーションを行った。
xy色度図に、sRGB(グレーの実線)、Adobe RGB(黒の実線)の色域を描画し、左はBenQ SW240、右はEIZO CS2420の色域を描画したもの。
左のBenQ SW240は若干、緑の色域がAdobeRGBよりも狭く、Adobe RGB カバー率は95.1%だった。
右のEIZO CS2420は、スペック通りAdobe RGBの色域をほぼすべてカバーしていることが分かる、Adobe RGBカバー率は99.5%だった。
品質重視ならEIZO CS2420・価格面ならBenQ SW240
EIZOとBenQの両社それぞれ製品のなかで、もっとも価格の安いAdobe RGB色域のカラーマネジメントモニターである、EIZO CS 2420とBenQ SW240の比較をしてきた。
比較した結果、カラーマネジメントモニターの性能としては、EIZO CS2420のほうが優れていると言える。色域もスペック通りAdobe RGB 99%カバー、デジタルユニフォミティ補正回路により色ムラもほとんどない。
ただし、価格はEIZO CS2420が8.8万円、BenQ SW240は4.6万円と大きな価格差があるため、多少の性能差は仕方ないだろう。
4.6万円でAdobe RGB色域のカラーマネジメントモニターが手に入るという点では、BenQ SW240も十分魅力的な製品である。
品質・性能重視なら値は張るがEIZO CS2420、手軽にカラーマネジメントをはじめたい、コスト重視ならBenQ SW240をオススメする。
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